訪問リハビリテーション・訪問看護のICT活用②

2022年8月15日

5.ICTの取り組み

当事業所は2016年よりICTに取り組んできました。紆余曲折ありましたが現在ようやく「ICTを活用している」と言えるようになりました。

本項では当事業所の具体的な取り組みを導入時期に分けて詳しくご紹介します。

準備期

 ICT導入に向けて様々な検討をして準備をすすめます。

〈課題の整理〉

2016年、当事業所は紙カルテを使用し請求業務のみソフトウェアを使用、業務連絡はメールと電話のみでした。
そのため、以下の課題がありました。

① 情報共有が困難

・カルテ情報を持ち出せない。
・複数の担当スタッフとリアルタイムに情報共有ができない。
・全スタッフでスケジュールを共有できない。
・緊急時の連携が後手になる。
・役職者が出先の場合、カルテ情報を把握できず、指示を出しにくい

② 個人情報の漏洩リスク
・記録用紙を紛失するリスクがある。

③ 転記作業が多い。
・帳票類の転記作業。経
・ヒューマンエラーが多い。
・レゼプト業務に膨大な労力がかかる。

④ その他
・帳票類の保管場所の確保。
・書類作成業務が事務所に限定される。

〈業務フローの作成〉

業務の課題を明確にするため業務フローを作成します。ICTの活用を目的とした業務フローの作成では、その特性に合わせた工夫が必要です。

ICTは『単純な繰り返し作業』が得意であり、医療業務における単純作業の繰り返しは、『情報の受け渡し』なので、医療サービスにおける業務フローは、『発信者』、『受信者』、『順番』、『頻度』を明確に分別する必要があります。

本稿では、訪問看護において実行頻度が多く、関わるスタッフが多い『予定変更業務』に焦点を当てて解説する。

① ICT導入前の業務フロー(表2)

縦軸は実行順、横軸はスタッフ別で表しています。また◯は発信者、■は受信者を表しています。工数が18と多く、6名のスタッフが関わっていることが分かります。また、情報の受信者が一人であり、情報伝達者が順を追って入れ替わっており、フローは大きく蛇行しています。

これは、伝言ゲームと同じ原理で、フローが進むにつれて個人の解釈が上塗りされてしまい、正確な情報が伝わらない可能性が高いのと、必要以上に伝達者が多いことが問題です。

② ICT導入後の業務フロー(表3)

◎はクラウドソフトウェアへの情報入力を表しています。
工数は9と少なくクラウドソフトへ入力された情報が関係するスタッフへ同時に共有さてれいることが特徴です。
さらに特徴的なのは、事務スタッフが全く情報を発信していない点です。つまり、予定変更業務において、事務スタッフはメッセンジャーである必要はないことが分かります。事務スタッフは、レセプトや来月の予定管理における業務のために情報を把握するだけでよいのです。

③ 業務フローの重要性

業務フローを整理すると、スタッフの動きが明確になります。業務の無駄も見えてきます。
スタッフの無駄な動きはスタッフに原因があるわけではなく、業務フローの課題であることが明確になります。
業務フローの課題の内、ICTでできることを選別すれば、ICTのメリットが明らかになり、ICT導入へ大きな舵を切ることができます。
しかしながら、業務フローを整理することは途方もなく骨の折れる作業です。そこで、まずは予定変更業務に絞って、業務フローを整理しICTを利用することをお勧めします。

 

導入期

ICT導入期は、不慣れな作業が増えるため、経営者、役職者、一般スタッフ、皆が一同に負荷がかかってしまう辛い時期であり、ヒューマンエラーが多くなる時期でもあります。 これらを前提に一致団結して取り組む必要です。
そして、社内ルールの決定をし、業務フローのメンテナンスを行うことが重要です。

 

①社内ルールの決定

ICTにおける社内ルールで筆者が重要視しているのは、情報の緊急性です。
情報取得者が情報を発信しない限り、誰も情報を受信することができません。逆に情報を発信しても受信者が情報を見ようとしない限り迅速に伝わりません。得た情報は必ず発信することが大前提です。
しかし、優先順位の低い情報を発信、受信していては情報処理に追われてしまいます。
そこで、重要な視点が情報の緊急性である。例えば、前述の予定変更であれば、当日の予定変更と来週の予定変更では、緊急性は大きく異なります。

弊社では、受信者が情報を処理するタイミング別で、『即刻』、『当日』、『翌日』、『翌々日以降』と情報の緊急性を大別し、共有する手段を分けています。
即刻は電話連絡、当日はSNSまたは電話、翌日は電子カルテまたはSNS、翌々日後は電子カルテに記載、としています。

私はこのルールに則り、どれだけ重要な会議中であったとしても、弊社から電話が鳴れば必ず応答するようにしています。その電話は、私が即刻判断しなければならない有事が社内で起こったことを意味しているからです。

 

②業務フローのメンテナンス

 運用を開始すると、ICTの全体像が見えて、より効率的なフローを作ることができます。運用開始後3ヶ月で一度見直しをすることをお勧めします。

 

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〇訪問リハビリテーション・訪問看護のICT活用①
〇訪問リハビリテーション・訪問看護のICT活用③